山に植わっていた木を伐採をしますと、水分を吸収することが出来なくなりますので、製材した木や板の中から水分は徐々に抜けていきます。
この水分が抜けていく過程において、木は大きく変形を起こします。
また乾燥した後も木は1年中、湿度の変化によって湿気を吐いたり、吸ったりを繰り返します。
反りのメカニズム
水分の吸収と放出のたびに木は膨張、収縮を繰り返し、変形が生じます。
では、なぜ膨張、収縮を起こすと、変形が生じるのでしょうか。
それは、一言で言えば、木の特質の一つである「異方性」にあります。
「異方性」とは、方向や場所によって物質の性質が異なっているということです。
異方性とは反対に、方向によって性質が同じ場合は、「等方性」といいます。
金属、プラスチック、ガラス等は方向によっての性質は同じと考えられますので等方性の物質といえます。
木材の性質についてはいろいろありますが、反りに一番影響を与えているのが、収縮率です。
つまり、方向によって収縮率が違ってくるのです。
では、どのような方向によって変わってくるのでしょうか。
この事を考える場合、木材には年輪が有りますので、この年輪に対しての3方向で考えます。
1.垂直方向(繊維方向)
2.接線方向
3.放射方向
以上の3方向となります。
丸太の年輪で言いますと、つぎの図のようになります。

一般的な板の場合で言いますと、次の3方向となります。

1.垂直方向は、繊維方向つまり木材が地上に生えている場合で言えば上下方向となります。
2.接線方向は、年輪の輪に接するような方向です。
3.放射方向は、年輪の中心付近を通って、年輪に直行する方向です。
上記の3方向の収縮率の比は、
垂直方向:接線方向:放射方向=1:10:5 となっています。
板材で言えば、垂直方向は長さ方向となり、接線方向は上面の巾方向、放射方向は下面となります。
したがって、板が乾燥して水分を放出した場合、長さ方向には若干ちぢみ、巾方向には上面が下面より多くちぢむことになります。
よって、板の巾方向は凹型に反ることになります。
逆に、水分を吸収すれば、巾方向が凸型に反ってしまいます。
上記の板材の場合は、下面がちょうど中心を通るように書いていますが、一般的には木の芯は避けて(いわゆる芯去り材)板取りをします。
放射方向から接線方向への収縮率は段階的に変化すると考えられていますので、木の芯を含んでいない板材の場合も、木裏側がより放射方向に近いと考えられますので木の芯を含んでいない板材の場合も同様の反りが生じます。
上記の異方性が、反りが生じる一番の原因ですが、もう一つ考えられることが有ります。
それは、円形に形成される年輪にあります。
木の木口(両端)を見て下さい。
年輪が有りますが、ご存じの様に木は生物ですから小さな細胞から
形が形成されています。
仮に一つの細胞の大きさを同じと考えた場合、上面(木表側)と下面(木裏側)の細胞の数は、年輪の円周の外側の方が内側より多いことになります。
また、一つ一つの細胞が同じ量だけ縮んだとすれば、全体としては細胞の数が多い木表側が多く縮むことになります。
したがって乾燥して水分を放出すれば木表側が凹型に反りが生じることになります。
木材の異方性については、各大学の専門分野において研究されています。
インターネットの検索で、「木材」「異方性」のワードで検索してもいろいろ出てきます。
ご興味の方は、調べてみてください。
反りのメカニズムで分かるとおり、反りは巾方向に生じます。
したがって、テーブルや机の天板のように巾が広い板の場合は反り止めの措置が不可欠となります。
反り止めの加工方法には何通りかの方法がありますが、
いずれの場合においても常に考えておかなくてはならない事が有ります。
それは、木材の動きを妨げるようなそり防止の措置をしてはいけないということです。
ご存知のように木材は、水分を吸収したり、発散させたりします。
それによって、木材は膨張、収縮を永久的に続けます。
その膨張、収縮を無理やり物理的に止めようとすると、木口割れの原因となります。
反り防止の方法
反り防止の方法には大きく分けて、次の3通りの方法が有ります。
1.天板に角材を取り付ける。
2.幕板に天板を取り付ける。
3.箱状の台に天板を取り付ける。
天板に角材を取り付ける。
下図のように、反りは巾が湾曲します。
したがって、この湾曲を矯正するために角材を取り付けます。

下図は蟻桟加工による方法で角材を取り付けたものですが、その他には、駒止め金物、木ネジを使用して取り付ける方法があります。

幕板に天板を取り付ける。
机やテーブルの構造のひとつに幕板を取り付けるものが有ります。

上記の図のように、4本の足を固定する板が幕板ですが、この幕板に天板を取り付けます。
取り付ける方法としては、駒止め(木製)、駒止め金物、木ネジ等で固定します。
幕板に天板を固定することによって反りを防止することができます。
駒止め、駒止め金物には木材の動きを妨げない工夫がされていますが、木ネジを使用するときも同じ工夫が必要です。
幕板と一体化したスチール製の足を使用する場合は、木ネジの穴の形を巾方向に長い穴にすると、天板の巾方向の動きを妨げることがありません。
箱状の台に天板を取り付ける。
四方を板で囲まれた箱は、皆さんもご存知のように大きな強度があります。
この箱状の台に天板を取り付けることによって反りを防止することが出来ます。
この方法ではもっと多くのパターンが有りそうですね。
反り止めの方法はこの他にも有りますので、皆さんもいろいろ工夫してみてください。
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